哲学者・数学者偉人列伝その8「トマス・ホッブズ」

トマス・ホッブズ(Thomas Hobbes)はイングランドの政治哲学者・政治思想家。近代国家における契約の概念を提唱し、ジョン・ロック、ジャンジャック・ルソーなどに影響を与え、事実上の現代にまで伝わる国家の礎を築いた人物として知られる。昨今の国家の枠組みに関する政治形態をめぐる議論にマルクス理論なども加わって、再評価されている。ただし、その政治思想についてはルソー同様誤解も多く、「国家主権をリヴァイアサンとして擁護した」と言われることも多い。これは厳密に言ってホッブズの総合的意見を曲解している。

まず、主著である「リヴァイアサン」では確かに国家に主権をゆだね、契約的王政を擁護したという見方が有力ではあるが、それはホッブズに関するすべての思想に目を巡らせないことが誤解の原因になっている。例えば、ホッブズは後期の著書(A dialogue between a philosopher and a student of the common law of England)の中でロックと自身の仮想対談をもってして、多くのことを語っている。むしろそれは昨今に思想をめぐる中立的な立場とか、いわゆる「新領域法学」に近いものがある。

ホッブズがこれらの著述の中で、その著述家としての能力が極めて秀でていて、ありとあらゆる学識をもっていたことは事実である。文芸や修飾の立場が極めて洗練されていて、無駄な部分がない。そういう意味でも、前述した著述の全史の目録を見たところでも、どう考えても「リヴァイアサン」だけで評価していい人物ではない。ホッブズはもっと多くの国家像を持っていて、それは多様的に派生する天才の理論である。日本におけるホッブズ研究の権威であり訳者でもある田中も同じことを言っており、ホッブズの再評価における誤解を近著でも取り上げている。

ホッブズはイギリスに生まれオックスフォード大学で学んだ。家庭教師として教育を伯爵から招かれこれを引き受けた。イギリスの政情不安に伴って、パリに亡命しここで著述を死するまで続けた。ロックとの仮想対談は実現しなかったものの、多くの自然科学者も含めての後人に強い影響力を与えたものとされる。ただし数学への問題提起はまったく評価されておらず、あくまで政治理論の天才として人々に今でも記憶されている。

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