哲学者・数学者偉人列伝その11「ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ」

イングランドの天才数学者ゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ(Godfrey Harold Hardy)。専門は解析学。主にリトルウッドとの共同論文執筆で知られ、また「数学の魔術師」と言われたラマヌジャンの才能を見抜いた唯一の人物として知られる。ここでは数学の業績よりも、その著述性について述べる。

ハーディは若いころは「私(とリトルウッド)よりも優れた数学者は現存しない」とかなりの自信家だったが、業績を上げつくしたのち学者としての円熟を経てしまったとき、一冊のエッセイを書いた。それが「とある数学者の弁明」である。ここでハーディは言い訳を合理化することに焦点をあてている。すなわち数学者の業績はどんなものであっても高度化し、自分たち以外は理解できないものになる過程において、自分がその業績の内側に潜んでいるというような比喩である。

ハーディは例えば相対性理論は応用技術化されない。あるいはガロア・アーベルに始まる現代群数学論もまた同じということと結論づけた。ただし、ハーディはこの説明において大きな間違いをおかした。いうまでもなく、次の数式が原子爆弾に応用されたアインシュタインの数式である。

E=mc^2

この式は質量はエネルギーに変換できるということが端的に表されている。すなわち原子爆弾…プロメテウスの火を手にした人間たちがいるということの証明である。ハーディの弁明はここにもってして否定された。相対性理論は原子爆弾として応用技術化されたのである。それは人類の進歩の貢献も同時にもたらした。原子力発電である。学問は技術として功罪あわせもつものとして応用化されつつある。

一方、ガロア・アーベルの理論はすでにこのカテゴリ記事で述べた通り、暗号鍵の理論として応用技術化された。あなたがemailを打てるのもガロア・アーベルの理論があってこそである。ここでもハーディの弁明は間違っていたということが分かる。人工知能の発展を見ればひょっとすると技術的特異点というものがあるかもやしれない。人間に解けない問題をコンピュータが解けるのである(ちなみに藤原は整数論はあと応用技術化には百年は必要だと述べているが、このままいけば、おそらくあと十数年で世界の数学界の様子は様変わりしているだろう)。

ハーディはインドの数学者ラマヌジャンのイギリスへの招聘者としても知られる。ラマヌジャンの整数論には証明するという概念はなかったが、ハーディは彼を高く評価した。正規の数学教育を教授すれば天才になっただろうが、その自然的野性性は数学の美学と一緒にラマヌジャンにいきづいている文化だというのである。そういうことでハーディはラマヌジャンに正規の数学の道を教えることは強要せず自然のままに学問をさせた。

風の噂に聞くと、ゴッドフレイ・ハーディは死ぬまで少年のような容姿をしていたらしい。

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