マジで恋する書籍レビュー:「水妖記」フーケ

マジで恋する書籍レビュー。記念すべき第一回目はドイツロマン派の白眉「水妖記」に焦点を当てる。この本のすごいところは簡単な文章と訳文で、ここまでの秀逸な美しい作品を書けるというところ。誰もが感じるところだけれども、当時ドイツでこのフーケの小説が刊行されると世界の大文豪ゲーテまでがこれを称賛したというほどだった。

この美しい娘と婚約すると水の上でその娘すなわちウンディーネのことをののしってはいけない。騎士が婚約をして、世界にもまれな美貌を持っているウンディーネのことを大切にしなければならないというおきてがある。その旨を騎士は約束するけど、それを一度破ってしまう。となるとどうなるのか?主人公の水の精霊であるウンディーネが騎士の命を吸いにくる義務が生じてしまう。

いうまでもなく萌え(?)とか流行りのアニメ系設定系だと言い切ってもいいだろうが、この文章文地が古典ロマン派にそってドイツ語で美しく描かれる様が見事な筆致で作りこまれている。ゲーテも称賛したという本書はその美しさではだれにもどこの小説でもかなわないぐらいという。ゲーテ曰く、「ドイツの真珠」とまで。当のゲーテはだれもが知っているように教養小説を書いたドイツのみならず世界の文学巨匠。

短い詩もついていて、これはウンディーネが王や妃の前で踊りを踊るというものになっている。ロマン文学は情緒性豊かにこれを描いたといっていいだろうが、教養小説家ゲーテとしてはこれを絶賛しおそらくすごく影響を受けたと思う。教養小説の語源を辿ってみると、やはりBildungsroman(=自分の教養と成長のための文学)というジャンルになるけど、きっと情緒力を身に着けるうえでゲーテも影響を受けたに違いない。

ただし、時代がロマン的な情緒力よりも実知的な現実主義(リアリズム文学)に変わっていくとフーケの名も地に落ちた。フーケは空想のみならず多くのジャンルに手をだすべきだったが、ゲーテはゲーテなりの、あるいはノヴァーリスはノヴァーリスなりの天才性を発揮した一方、自身は不幸の中に落ちて死んでいったらしい…。それはいつまでも時代のニーズに即した文学を発展させずに、ロマン主義の中、ある種ロマン的虚構のなかに自分を落とし込んでそれにはまってしまったからであった。だけれども時代も廻ればまた文学も廻る。そういう意味でこの書籍はやはりドイツの文学史上にのこる最高傑作といっていいぐらいの完成度を誇る。

ついでに言っておくと、フーケのいうところは実はゆうきまさみの漫画バーディのウンディーネの役柄にまで影響を与えている。ゆうきはオタクだから、これを知っていて当然、さすが博識のゆうきといったところか。元ネタが実はこのフーケのウンディーネなんだよな。別な観点から見てみると、W桜の活躍でライトノベルも再評価があるかもやしれないが、そういう時代のニーズ、文学のニーズに沿っての形でこの小説が再評価されるのもまた来るのかもしれない…そう思う。

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