マジで恋する書籍レビュー:「日本に足りない軍事力」江畑

著者はまぎれもなく天才である。北ミサイル有事の際にこのような警告を早い段階から出して、客観的に分析を精緻に行い、そして準備をするということを”あえて”自民党よりではない立場からこういった著書を多く出していた。私は江畑の著書の中でも本書は最高傑作だと評している。

本書には防衛族とか田母神とかそういう類のシンパ的意味合いがまったくといっていいほどなく、また著書として誇れる業績になっている。分析も高い軍事理解の能力があってこそであり、田母神に劣らないどころかそれを凌駕している。田母神がチャンネル桜などに出演するのも別に問題はないが、そういう意味で比べると、江畑という軍事評論家は日本がほこる最強の軍事評論家だったと実に思う。ピンチになると毎度のことながらNHKに出演する江畑だったが、やはりその特徴的なスタイル切り口、納得力のある語り口には当初驚かされたものだ。冷静沈着、分析が研ぎ澄まされ、いい意味で公共放送の役割を代替してくれていた。

本書の中で、その象徴たるものが、巡航ミサイルと弾道ミサイルの違いである。江畑は弾道ミサイルとの違いを巡航ミサイルから引きだして、しっかりと比較し、本書において、その脅威が低空を飛行する巡航ミサイルにあると結論付けているが、この傾向は昨今かなり強まっている。弾道ミサイルと違って、戦闘機から核弾頭搭載のミサイルを低空で発射できるのである(しかも超高速でレーダ探知されにくい)。

サイバー戦闘や宇宙の活用などその他もろもろの意見が単純な右翼系の軍事評論にとどまっておらず、客観性のある立場から正確な筆致で作られている。いまでこそドローンや無人攻撃機の時代などと騒がれているが、江畑はジェーンズ特派員としてやはり天才的な軍事知識を持っておりこの傾向もつかんでいたことに間違いない。現に、江畑の生前、イスラエルの無人攻撃機は当時から有名だった。

またその経歴も輝かしいものだ。単純に上智の出身というだけではなく、ジェーンズ特派員としての役割だけでもなく、ストックホルム平和研究所の研究員まで務めた。本当に冷静さのある的確な人柄は素晴らしかった。愛妻家で知られ、奥さんとの仲もそうとうよかったのだが、道半ばで病気に倒れたのはあまりに惜しすぎた。人望あるひとが病気で若くして亡くなられる虚しさを私も子供ながらに感じたものだ。

私は著書として彼の「世界の特殊部隊」も読んだし、読売での特殊部隊監修もたしか読んだが、やはり彼最高の啓蒙書は本書であろう。今改訂版のようなものを出せる軍事評論家はいまだ日本でひとりとしていない。江畑の影響で軍事評論家に憧れた若者も多いはず。自衛隊の問題点を内部から取り入れて執筆された、当時としても今としても学ぶことが多い….否、今だからこそ学ぶことの多い傑著である。

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