エンタメ評論:「聲の形」山田/京都アニメーション

京アニのひさびさの作品(?)ですかね。レビューします。

まずストーリーは杜撰です。ほとんどがライトノベル式の感情移入ばかりの典型例でこれは酷評されるなという感じでした。キャストもすごいんだけど、やっぱりアニメーションの特徴をライトノベル的に照らし合わせたような模範的なうすさがにじみ出ます。ですが、その味は悪くはない。文科省が推薦したり、シーメンスの補聴器部門・聾唖協会が協力したりするのもうなづけます。そういう意味では満点です、がレビューするとなるとこれは酷評する点が多いと思う。それゆえ人によってけっこう変わってばらばらになっていくなという印象でした。

杜撰なところ。心理描写がうすい、ラノベ的ってかんじ。例えば、なぜ自殺を選択するのかってのが深く追求されず、小説の域に達しておらず、あくまでアニメ映画だなという感触でした。死ぬってのはそうそう簡単なもんではないし、世界観を浮世離れしない方面にもっていきたいがため、その狭間で苦しむ様子もやはり浅い。心理描写を重視するラノベをアニメ化したような印象で原作が漫画ってのもうなづける出来です。例えば、脇役の役割がちょいちょいうすかったり、ええ?ここでまた喧嘩すんのかよ!?そりゃないぜ、ってアニメの世界ながら思ってしまいます。結弦の役割だったり、旧友島田の立場だったり、あるいはヒロインの立場西宮の立場が微妙にあいまいにあっている。声が聞こえないということがどういうことなのかも深く掘り下げず、脚色だけになっている感じは否めない。

また、アニメーションの特徴をとりいれたがいいけど、それまでになってます。例えば、主人公の母親のデザインだったり、義理の兄のデザイン、あるいはハーフのいとこのデザインだったり工夫があることはいいけど、やりすぎっていう印象がデザイン的にはある。これでこの深刻な問題とか苦しみを描けるのか?といういやな印象も持ちます。ですが、全体的な映像美は序盤の序盤あたりの導入を含めて、素晴らしいし、ここに限ってはNHKのアサイチでやってたようにすごく象徴的でいてそれで現実味があります。ただその後、だれていきているということでは批評されて批判されるだろうなと思った次第です。ではこのアニメは駄目なのか?私はそうは思いません。

因果応報というか自業自得ということを意味ある独自色で映し出した点は素晴らしいの一言。これが文科省の推薦を受けるのもわかります。いじめの安易な部分をアニメーションのうすさでカバーリングで来ていて、「いじめは駄目なんだよ、言葉の暴力ってのもあるよ」ということが如実に出てきて、それの裏あわせとしての罰則みたいなのがある、頑としてあるということは何度も繰り返しうったえかけるものがあります。それはすごく素晴らしいアニメ映画になっている。よって無理して某作品とか某作品みたいに実写化せずにこのまま閉じてほしいんです。そういう意味では「教訓」ですね。だから、実在の聾唖団体が協力するのもすごくいいことだと思った。

そして素晴らしいのは音響です。この良さだけは認めざるをえない。やはり電気グルーヴとかのからみですね。牛尾Pがそういう系の音楽に詳しくて世界観にマッチしている音響がすごくいい。それに重なる声優の演技もいい、すごい。ただし、aikoが歌っている曲はたしかに彼女の才能があふれてすごいんだけど、微妙に世界観にマッチしてなくね?っていう疑問はありました。なんといっても愛を感じさせる作品ではないし、恋も感じなかった。あるのは「友情」のみです。ですがやっぱ最終エンドに入る自分の殻を破る形で物語が世界を閉じたのはすごくいい演出です。ここは特段に評価できて、やっぱ全体はばらんばらんになっていながら、上映時間が2:10もあるのはあまり気にならんかったのは私自身社会的なメッセージがこの作品の中にあるのでは?と思ったから。そういう意味では繰り返しになるけど差別や偏見に立ち向かう若者を描いたからだと思います。だから酷評してでも見てよかったと思うよ。

どっちかというと差別や偏見を乗り越える、というよりはその人間性の本質をうったえかけそれに負けない人々を描いたということが本作が一定のファンを獲得してくれるのは素晴らしい。そういう印象主義・象徴主義の”声”を描いたのがすごいところだと思いましたです、ハイ。というわけでなんだかんだいって、本質つく意味ではストレートで、多少ばらばらであってもそれを受け入れる方、私にとっては及第点を十分確保していいのでは?と思いました。

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