哲学:「心の哲学」思考実験編”テセウスの船”

今回の思考実験は”マリーの部屋”よりもずいぶんとわかりやすい。アイデンティティーをめぐる哲学の命題のうちのひとつといってもいいだろう。これは「スワンプマン」の思考実験と似ている。同一性をめぐる問題だ。ではまずスワンプマンの思考実験から入ろう。

ある男が死んだ後、なんらかの自然的に発生した化学融合によってその男と同じ原子でできた同じ物理的挙動を持つ男(はじめの死んだ男とは違う男だが構成物質に変わりはないということ)が出現した。新しくできた男は、かつて死んだ男とまったく同じ生活を続け、同じものを食べて、同じ性格で人に接して、そして死んだ。ではこの男とはじめの男ではどこにアイデンティティーがあるのだろうか?同一性はどこにあるのだろうか?”違う”とは何のことだろう?

ではこの思考実験を踏まえた上で、テセウスの船を解説する。

とある船がある。人々はそれを新築のものにしようとして部品をとっぱらって新しい部品で船のパーツすべてを同じように置き換えた。ではこの新しくできた船はもともとのあった船とどう違うのか?ということを船の主が人々に尋ねた。人々の中には「これは同じ船を新しい部品でおきかえたのだから同じ船のことだよ」と答えたものも大勢いたが、中には「新しい部品を使ったのだから違う船だろう」と答えるものも大勢いた。さてどちらが正しいのだろうか?そしてある人々は、もったいないので置き換えてしまってごみになった古い部品をつかって、またはじめの船と同じ形の船を作り直した。さて、今二つの船と一つのかつてあった船が思考の中にある。どれが正しい船で、どれが違う船なんだろう?この船をテセウスの船と呼ぶ。

アイデンティティーとは「自分は自分である」ということだが、スワンプマンもテセウスの船もこのことを懐疑的に見ている。つまり、構成要素が同じであれば別の部品を使っていたとしてもどちらが本物なのか基本的にはわからないのである。そして同じ物質で作られた同じ構成の人体や船がどういった同一性を持ち「私は私である」「これはこれである」という定義のあいまいさを持ち出している。さて、あなたはどう考える?あなたはあなたであるという認識の下であなたは普段生活しているだろう。ただし、この一見常識的で間違いのないように思えていたアイデンティティーは実は虚構であるかもしれないのだ。これがスワンプマンとテセウスの船の提起する思考実験である。

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