哲学:「道徳哲学」”ネパールのビール”吉田

中学二年生のときの兄貴が道徳の教科書を授業の休み時間に読んで泣いたってことを思い出す。それがこの「ビール」に収録されているエセーの「ネパールのビール」だ。吉田直哉というNHKのキャリアディレクターが書いたもので、こいつはたしかに当時は相当感動ものだった。内容はどのようなものだっただろうか?検索でたどり着く人がおそらく多くなると思うので、キーワードも振りまきながら書いていこう。

まず、吉田をはじめとして彼らはディレクターとして取材活動にネパールに訪れていた。だが山岳ルート歩行のことを考えていくとビールは持っていけない(重いから)。だから少年に頼んでビールを買ってきてもらうことにした。彼にビールを買ってきてもらうことを頼むと、きちんとビールを買って持ってきてくれた。その後、また買ってくるよといってくれたので、かなりの量を頼んで買ってきてもらうことにした。だが、二度目は待てども待てどもはだしの少年は帰ってこない。学校の先生やその周りの人に相談すると、「ビールダースの大金を少年に与えたのだからそれを持って逃げたのだ」という。

吉田はこう思った。「不慮の事故かもしれない…、あるいは少年にだましの悪行を働かせてしまったかもしれない…」と。そう思ってずっと待って二日後、彼(少年)は戻ってきた。なんと隣の山を越えて、ビールの不足分(物量として売ってなかった分)を遠くに行って買ってきていたという。途中で割ってしまった分もあって、少年は詫びたという。なんということだろうか。吉田は自分の安直な行動に泣いた。そして自分の反省として彼に危険の片棒をかつがせたかもしれないこと、そしてそれ以前に彼の誠実さを目の当たりにして彼のことを信じ切れなかった自分を恥じて泣いたという。

これが「ネパール(たぶんヒマラヤ)のビール」の大体の話だったと思う。これは確かにすごいことで、吉田の実直で冷静な判断が最後の文章につまっていると思う。ただ、吉田はやはり自分の反省としてこの場面を書くけど、はだしの少年に危険をさらしたことよりも彼のことを信用できなかった自分に「反省し」て「泣いた」というのだ。このビールアンソロジーにも収録されていることが、NII(情報学研究所)のHPにまとめられて(http://webcatplus.nii.ac.jp/webcatplus/details/book/29645704.html)いる。

これはすごい啓蒙書だなと思った…確かに道徳は二面性がある。このエセーの場合、自分のふがいなさ反省点とともに少年の誠実さを信じられなかったという「人物の二面性」がここに書いてあるのだ。だが、たしかにそれはそうだが、それは後者のほうがやはり強く道徳として機能する。これについては深く掘り下げるとかなりの難解な問題につながるので(倫理学とか)解説動画が大学教授から出ている(https://www.youtube.com/watch?v=6NTTmwjQYbU)からしてそれを参照してほしい。ちなみにこのエセーは「中学生の道徳2 自分を考える」にも収録されているそうである。―「我々が哲学を考えるとき、一番有益なのは寓話でありかつ実話である。」

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