マジで恋する書籍レビュー:「響け!ユーフォニアム」武田

いや驚きました。こいつはライトノベルっていうよりかは純粋な小説に近い。つか表紙だけがラノベ、あとは小説。しかも純粋に青春小説とかそういう類のものじゃない。私が読んだのはこの冒頭部分から最終部分にまたがるのをパッと速読で読みましたが、これはふつーの小説です。しかも面白い、大衆小説といっていいのではないか。秋山瑞人もいわゆる「地の文」で独特な表現を施すことでラノベ世界に旋風を巻き起こしたのに近いものを感じましたが、決定的にはあれとはまったく違った手法です(というより、そもそもがラノベではないので単純に比較できない)。

たしかにこれは映像化したくなる小説ですよ。「地の文」の骨子がしっかりとしていて、登場人物の語り部に頼ることなく、吹奏楽のサークルのありがちなところを現実的に落とし込んでいて、そいつが現実味でもってして我々読者に示される。私が特に注目したのは「地の文」で、そこに的確な表現を持ち込むことで(回りくどさとかは多少あるけど、気持ち悪いぐらいではない範囲に収まっている)、全体としての小説の完成度が高い。恋愛ものでもないし、青春でもなし。部活動を通じて苦しいところ、厳しいところ、あとうれしいところを人間的なまなざしで描いている。それがしっかりとしている文章の合間合間に的確なかっこ使い方の発言の特徴さが浮かび上がってくる。

それゆえほかの作品と単純に比較できないほどオリジナルな表現がなされている。これに目をつけてアニメ化したひとはまぎれもなく天才です。京都アニメーションの技術技量もまた素晴らしい。例えば、アニメ化したら演奏部分をフルで流すなんてことふつーしません。「四月は君の嘘」でさえ冗長でそれをいうなれば、同じ音楽物でもポエマーだった(無論、それが楽しい人にとってはそれでいい)。だが、この作品は過剰演出でもなんでもなく、現実さが夢とリンクして、努力が実るシーンをいかにもフィクションの中でうまくバランスとって表現できている。で、しかもそれを逆手にとって、小説ではあまり表現できない音楽の部分をイデアにして、京アニは映像化しているんでしょうね。

だから、小説部分、数ページすくなくとも演奏部分の20ページぐらい(?)、立花隆が言っていたような誰にでもできる図式化の我流速読なので正確なページ数はわかりません。が、それでもなおこの作品で描けなかったところをフル音源でアニメでは描いていて、小説版の魅力を損なうことなく、うまくイメージに描き立てられている。こいつは原作もそれに目をつけてアニメ映像化にしたかたの力量も着眼点も素晴らしいというわけです。

個人的には桜庭嬢が評価の高い公的な文学賞受賞したんだから、このかたであっても同じぐらいの賞は今後受賞できる力量をすごく感じました。ただ、いまいちそこに至るまでのピースが欠けているなとは思っています。ですが、素晴らしい技術力だと思います。これは今までに見なかった種別の小説といってもいいのではないか?読むのが苦にならなくしかもバランス的に構成されていて、ハルヒとかピアノソナタとかのラノベ系列ではけっして見受けられなかったような独自の表現が確固たるものとしてなされています。高評価です、マジで満点あげていいでしょう。このかたの新時代に非常に見合った小説の作り方・作法だと思います。

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