特集記事:テーラーメイド医療―医学および工学の融合と学問の革新

テーラーメイド医療は近年強く期待されている分野だ。これは私見では大きく二つに分けられる。まずは医療の分野だけのもの、純粋な医療部門の研究者(医者)が研究する基礎研究を主とするものだ。第二に、医療と他分野、おそらく工学が主になるだろうが…それらの融合分野がある。テーラーメイド医療は、オーダーメイドの医療を提供できる、総体の中の個体の個性に合わせて医療を企画できるのだ。ただし、これにはかなりの倫理性も含まれる問題だろう。士郎正宗がSFの中で言うように、実際技術の高度化はいつでも人間の歴史の中で便利さを提供すると同様、不便利さ、時には害悪すら持ち出した。これは近代以降の公害に代表されるよう技術の不道徳のありかただった。その中で田中正造の足尾銅山をめぐる願いも石原都政における公害の規制も歴史の中で技術のもたらす害悪をどのように指摘し、是正してきたかというメタ歴史がある。技術が困難を生み出したが、革新技術はそれを克服する。そのたびに問題は出現し、それをまた解決するための学問体系が求められるわけだ。

動画でアリソン・マッグレガーが言っていることはそういう意味で、彼女がいうよりもずっとずっと拡張できる医療分野だ。マッグレガーは医療における男女の差異の解析には大きな目的があることを信じて疑っていないようだし、これは狭義にはまさに妥当な論理だ。だが、マッグレガーが前者のテーラーメイド医療のうちの一つの選択肢を標榜しているのと同時に成り立つものがある。それが融合医学だ。神戸大学の杉本真樹が言うように医療は情報工学と融合することにより、マッグレガーが言うような種別の新しい知識と、さらには医療イノベーションを持ち込んだ。要するに、ここにいたって純粋な医学だけの問題ではなくなったのだ。学問は進化し、さらに新しい科学学問の源泉となった。

ロボット工学に代表されるように、福祉のありかたを根本的に変えたり、あるいはマイクロ工学が薬効を制御できるようなアイデアをもってして医学のイノベーティブを提唱する学者は多い。彼らの考え方はそうとうフラットなわけだ。要するに医学はその自身の持つ性質故腐敗ももたらした。だが技術が工学が、医療と結びつき有機的に派生していくことによって、その腐敗を今克服しようとする目的が再びできたわけだ。また、工学部出身の学者が医学の知識でもってしてこの世界に界面的に接する試みがみられるわけであって、今、医学は医学の問題だけではなくなったのだ。そういう意味で、「医学部だけしかそういう研究はできない」とか「人命を救うのは医者だけ」という考え方は古すぎる。

ロボット工学においてはロボットスーツの開発は世界中でなされているし、日本における権威がサイバーダインの山海嘉之だろう。サイバーダインは技術が悪用されることを、特に軍事目的にDARPAが行おうとしていることを懸念してDARPAのエージェントの勧誘には断りを入れた。山海が言うように、ロボット技術はアイザック・アシモフが提唱したロボット三原則に沿ってなされる理想的使命があると述べた。杉本はこれをもっともっと純粋な医療の良い面の提起として技術開発を行い、それが人間の複雑化した医療分野におけるソリューションとして体系的に情報工学の観点から医学を再構成した。具体的にいえばiPadを利用した医療情報革命だったし、ソフトウェアと3Dプリンターを用いた、臓器の再建技術(患者にあっただけの臓器を再び作って提供すること)だった。ここにきてOsiriXとその背景にあるMac技術の利用が再び勃興してきたのは大きな歴史的意味があるように感じられてならない。

そういう意味でも経済的な意味でも、物体の複製が可能になる時代が来るだろう。そのとき物体が物体としての役割を担い、それのみ単一で成り立つことはなくなるかもしれない。実際、もののコピーができる技術は未来にみえるのだ。そのとき、社会のありかたはまた一歩進歩したといっていい。その中で定義される問題は一番大きいものとして、やはり「人間とは何か?」という命題だ。時が来れば、ホッブズ(有名な「リヴァイアサン」の冒頭部)やマーク・トウェイン(「人間とは何か?」)が言った「人間機械論」という大きな問題は「医療倫理問題」として技術的にも復活するだろう。

*この記事は許諾の上での再編集記事です。

marikoi

ここの主筆・共同管理人。ぶっちゃけ狂人。

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