子供のための文化思想論説:チャレンジャー号事故と技術倫理―ルメジャー・ボイジョリー・ビルジョイ

みなさんも日本の科学技術の高さはよくご存じだと思います。動画で示されているのは、自衛隊式のファンネル型の弾頭ですが、軍事技術への転用もまた昨今では議論に上がります。ここで紹介したいのは技術者倫理という学問です。ここで問題なのは包括的な技術の問題であって、その一分野が技術者倫理であり、それも含めて全体として技術が私たちの未来を定義するということなわけです。では教科書となるこの優れたウェブページ(http://takumi296.hatenablog.com/entry/2014/03/26/044911)から考察してみましょう。

技術および技術者(技術の活用者)が倫理観(正義とか悪を定義するための哲学要素)を持たなければならないという意見は急速に広がっています。ロボットやマイクロ工学、遺伝子改変含める遺伝子技術といったものが台頭しつつ、我々人間のアイデンティティを問うような問題に発展しているからです。これはなにも私が考えたことではなく、数年前から…いえ、数十年前から同じような議論やインスピレーションはありました。

例えば、SFで描かれたようなハッキングの技術や高度な知的生命体や機械が人間を支配したり、洗脳したりするというアイデアはいくつもの物語で書かれてきたし、その懸念は強まる一方です。そして空想だった問題が現実化していくにつれて、それゆえに技術者が倫理観を持って仕事にあたらねばならないという概念が浮かびました。これが技術者倫理の発端です。そして技術者倫理学問におけるその代表格が、ルメジャーという建築士です。上URLより引用させていただきます。

設計上の問題を解決するために、シテイコープタワーの構造設計者として白羽の矢のたったのがルメジャー氏です。彼は、すでに高層ビルの構造設計で幅広い経験を積んでおり、その革新的な設計によって全米でも第一級の構造エンジニアとして名が通っている人物でした。ビルの特異な条件を満足させるために、ルメジャー氏は鉄筋の構造に斜めの筋交いを入れること、及び、揺れを押さえるための質量同調ダンパーという装置を最上階に設置するという独創的なアイデアをもって構造設計を行います。

(中略)

翌月の1978年6月、ルメジャー氏は、工学部に在籍する一人の学生から電話でビルの支柱に関する質問を受けます。その質問は建物も耐風力に関するものでした。当時のニューヨークの建築条例では、風は垂直方向からの影響のみを考慮すればよいという規制にとどまっていたために、ルメジャー氏は、シテイコープタワーの斜め方向の風に対して正確な計算をしたことはなかったのです。

ところが、斜め方向の風を計算したルメジャー氏は愕然とします。斜め方向からの風により、主要な構造部材には想定されていたよりも40%以上大きい応力が働き、接合部では応力が160%も増加するという計算結果でした。急いで、建物の設計段階でコンサルタントをしていたウエスタンオンタリオ大学のアランダベンポート(著名な構造力学の研究家)から、風洞試験のデータを入手しボルト接合への変更なども反映した「実際に建設されたシテイコープ・タワー」について検討します。

その結果、接合部が現状のボルト接合のままだと、16年に1度ニューヨークを襲うハリケーン程度の風力で,建物が倒壊する可能性があることがわかったのです。1978年7月末の出来事でした。

ルメジャーはこういった経緯でビルの倒壊という大惨事を防ぐことができた、技術的だけではなく倫理的にも超一流の建築士です。だから技術者倫理の教科書にはルメジャーはヒーローとして描かれていることが多く、それは多くの場合妥当です。迅速にこの後ルメジャーは行動し、ビルの改修にこぎつけて、みごとに建築士としての誇りを失なわずに仕事を完遂しました。

一方でチャレンジャー号の事故では、問題がわかっていた技術者がいたもののシャトルの空中爆発はまったくもって防げませんでした。このことに気づいていた技術者がこれまた技術者倫理の学問で有名なボイジョリーです。彼はOリングの問題によって、機体が構造的に散開する可能性があるということを知っており、NASAにも何度も勧告したのにその意向がうまく伝えられなかったという経緯があります。ちなみに事故調査委員会にはNASAに批判的だったかの有名な理論物理学者リチャード・P・ファインマンが所属していて、彼はテレビ実演でその問題点の実験を誰にでもわかりやすくしたことでも有名です。

さて、これらの話題から私たちは何を学び取れるでしょうか?もちろん問題の芽を摘んでいくことが重要ですが、悲劇をまた引き起こさないようにすべきことを考えなければならないことも多いでしょう。ですが、これは組織運営や意思決定という立場からでもまだまだわからないことが多いと思います。エンロンや東芝に始まり、現代でも倫理観を企業に求める風潮は強いものがありますが、改善してきてはいるもののまだまだ大きな社会問題です(みなさんがよく知っているように)。

また、未来を見据えることも重要です。これからの未来技術の浸透とともに人間のアイデンティティを変えかねない倫理問題を取り扱ったものとして、Wired誌に掲載されたビル・ジョイの「Why the Future Doesn’t Need Us」(https://www.wired.com/2000/04/joy-2/)があります。NBC(核・生物・化学)兵器がGNR(遺伝子工学・ナノテクノロジー・ロボット工学)の問題に変わっていくことに合わせながら、アインシュタインがルーズベルトに核問題を手紙で投げかけた経緯を筋立てながら現実の話としてなされた有名な倫理観をめぐる論説です。

彼は技術者として一流なだけではなく、技術者倫理の立場からの未来学の権威でもあります。その一端はTEDで彼の演説「Bill Joy: What I’m worried about, what I’m excited about」(https://www.ted.com/talks/bill_joy_muses_on_what_s_next)として見れます。私たちがおかれている立場は実は技術の問題でもあり、それは社会全体の問題でもあるということが彼ら偉人たちから学べる一つのことです。しかしそれらの技術が、未来への期待とともに実は危険性というシグナルが含まれていることに私たちは子供たちに教え伝えていかねば、狭義の意味でも広義の意味でも、こういった社会的問題はまた確実に起こるでしょう。

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