連載たまにはゲームでも:伝説のゲームデヴェロッパBioWare編―バルダーズゲート・マスエフェクト・ドラゴンエイジそして伝説へ…

ロゴは古典的であり、そのゲーム制作のphilosophyをうまく表しているように思える。彼らの会社BioWareの作るゲームはその性質故、ゲームの歴史上いつでも最も古く、またもっとも新しいのだ。―https://twitter.com/biowareより引用

今でこそEAの傘下としてその名を世界に轟かすBioWareだが、実は、もともとこの会社を設立したのはメディカルドクター(北米でいう医師資格のこと)の学位をアルバータ大学でとったRay Muzykaが作ったベンチャー企業だった。これが1995年のことであり、この数年前に設立されたBungieを含めて、現存する現代の伝説的ゲームデベロッパと同じくして、やはりこの当時は弱小のメーカーにすぎないものだった。BioWareの最初のゲームはメックシミュレーションであり、これがBioWareの最初のゲーム会社としての一歩であり、Windowsにはまだ対応していないぐらいニッチなゲーム市場を狙ったものだったわけだ。今回から連載の趣向をちょっとばかし変えて「伝説のゲームデベロッパ編」と称して、いくつか歴史上最強のゲーム会社を見ていく…という企画を数回に分けて執筆していくことにする。

Ray Muzykaはその名のスペルを見ればわかるように純粋なアメリカ人ではなく、カナダ生まれのカナダ人である。アルバータ大学というとカナダでも最もレベルの高い大学のうちのひとつだが、まさか彼が実は医師資格を持っていると知っているゲームジャーナリズムの識者は正直少ないだろう。AIの研究から転じてゲーム会社の設立にかかわるだとか、大学を中退してゲーム会社に入るなど、「異才」が多い中でも際立って異色すぎる経歴の持ち主である。医師がゲーム会社を設立するパターンというのは筆者の知る限りでは、BioWareを除けば皆無だ。もっともビジネスの知見はあって、MBA(経営学修士号)をウェスタンオンタリオ大学で得ている。

今でさえ世界でもっとも優れたRPGといわれるバルダーズゲートを作ったのもこのBioWareだ。この時点でもう最高傑作との評価ののろしを大々的に挙げて、ここからBioWareの快進撃は始まった。バルダーズゲートはクオータービューに近い、大局的な見地から状況を見下ろせるようなRPGであり、テーブルトークゲームをもとにして作られた古典的なゲームだった。それゆえに今でもSteamなどで配信が好評としてしばしば例に挙げられるのはゲーマーならば誰もが知るところではある。それだけこのゲームは「生まれながらにして古典」だったのだ。結果このシリーズはネヴァーウィンターナイツに受け継がれ、テーブルトークRPGが世界でもデジタル局面で通用する基盤システムになることを実証された。当時からずっとずっと先をみこして、古典的傑作を作ったため、BioWareが偉大だということが言われるゆえんはやはりこのころから”あった”。ハック&スラッシュを超えたロールプレイの実感は熱心なWindowsゲーマーの根っこをつかんで離さなかった。

彼らが次に取り掛かったのは今でもこれまた傑作として知られるSF-TPSアクションシーンで注目されるマスエフェクトである。これは有名な独特な性表現と合わせて、お得意のRPGのシステムをTPSアクションとして煮詰めて、うまくリアレンジした彼らが、本格的に最初に取り掛かった、シューティングアクションである。このころから一般的な知名度が上がり始め、BioWareは名実ともに世界を代表するゲーム会社になったわけだ。そしてそのゲームの革新さと保守性をうまくバランスよく取り込んだ、彼らの会社は成長性を見こされて2007年EA(エレクトリニックアーツ)にとうとう買収された。この時点で、設立者である、RayとGreg Zeschukはついにアメリカンドリームをつかんでミリオネアになったはずだ。なお、マスエフェクトは今作もまた期待がかかり、まだまだ情報が出てこないもののアンドロメダというサブタイトルで2017年にいよいよ発売されようとしている。

BioWareの快進撃はこれにとどまらなかった。これに加えて独自にアレンジしてゲームに本格的ファンタジー”色”を付け加えたのがドラゴンエイジシリーズである。選択肢付きでゲームが進むストーリーテリングの形式を併合させた、周回要素もありまた中毒性が極めて高い傑作と言われることも多いこのシリーズも大成功のセールスになった。このゲームは登場するや否や、世界中のゲーマーを熱気に包み込み、このタイプの技…すなわちコンピュータ上でシミュレートされるテーブルトークRPG、その巧さ自体が文字通り彼らの十八番(おはこ)になった。計算式に基づいて、コンピューテーショナルに電子上でシミュレートされるゲームは彼らのお得意技になり、またそれがゲームシステムをうまく派生するためのきっかけとなっている。

彼らの食指はまだまだ野望に燃えていて、ルーカスフィルムと良好な関係を構築するなどMMORPGの開発でも知られる。彼らはスターウォーズシリーズのMMORPG化にまでこぎつけたが、すごく厳しく精査して見ていっても唯一の失敗といえるのがこの作品だろう(それだけ駄作凡作と呼ばれるゲームがBioWareには皆無なわけだが)。MMORPGの良作とだけで知られるスターウォーズオールドリパブリックがこのネーミングタイトルである。彼らのゲームの多角化はこのMMORPGおよびDLC商法で成功とはお世辞にも言えない状況。だが、F2Pタイトルにすることで、「延命」にはうまく使えて、彼らなりのゲームリソースに培った運営技術が今後生かされるのは間違いない。バトルフィールドのフロストバイトエンジンの供給も受けはじめ、彼らがこのスタンダードなエンジンを使って、次世代のゲームを作っていくことだろう。その矢先になるのは先述したようにマスエフェクトアンドロメダである。

BioWareのタイトルを俯瞰してみていくと、やはりゲーム制作に哲学が必要だ、ということがわかる。それはもちろん解釈されたゲームシステムであっていいのだが、例えば、ストーリーに重厚さを組み込んだ伝説のFPS「Marathon」の生みの親Bungieであったり、 デザインにユーモアさを組み入れた「バンジョーとカズーイの大冒険」のデヴェロッパRareだったりするのだが、この観点から言ってBioWareの場合はそれはシステムに融合させたテーブルトークRPGに他ならない。しかもBioWareの場合どのタイトルにも応用できるコンセプトになりうる。彼らが成功したのはそういう意味で実は古い技術のアナログテクノロジーであり、もう死んだといわれたテーブルトークをうまく計算機上でエンターテインメントとして成立させたことにある。群雄割拠のゲーム市場でデヴェロッパとして活躍するのにあたり、こういった一貫したコンセプトが重要なのは間違いない。ゲームは個性ある色彩に彩られてこそゲームであり続ける…BioWareの作るゲームをみていくとそれがよく納得できるはずだ。上述のIGNの動画ではこれがしっかりと語られていて、ゲームのアイデアがどこに隠されているかがよくわかるものになっている。

当時一介の弱小ベンチャー企業でしかなかった彼らの成功は紙の形式だった想像上の”神話”をうまく計算機でシミュレートしたことにある…彼らが成功している理由はやはりこの第一の理由それだけであり、IGNの記者も動画上で語るようにそれだけがBioWareなりの”DNA”なわけだ。―本連載内の企画では少なくともあとふたつレジェンドとなる会社を取り上げようと思っている、それがBullfrogとRareである。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA