統計学:中室牧子准教授のいうゲーム論は本当か?【Grand Theft Childhood:ゲームは悪影響?】

中室准教授がNewsPickで因果と相関は違うということを述べておられ(https://newspicks.com/news/978234/body)だ。私が思い出したのはハーバード大学の心理学研究チームがまとめあげたこの分野では世界的に有名な論文である「Grand Theft Childhood」というもの。これの解説を見ればわかるが、確かに中室先生の言うように因果と相関は違うということが明記されている。簡単に論文の内容を追っていこう(無論、重要なのは結論だ)。全般的な人文科学の知識が豊富なこと、ゲームの知識やゴア映画などの現代メディアの知識が求められる(政治的問題も加味しているようである)。

データ解析の手法は簡素であり、子供にGTAやSimsなどをやらせてその結果を学校での行動の追跡調査によって調べようということだ。因果はcause-and-effectもしくは因果関係としてcausalityという英文で示されるもので、方向性を考慮したうえでのふたつの事象の関係を紐解くものである。対して、相関はcorrelationもしくは相関関係としてcorrelationsとなっていて、これは双方向性を考えたうえでのふたつの事象の関係である。中室先生のいうように因果と相関は違う。因果はA⇒B or B⇒Aだが、相関はA⇔Bを表すのである。センシティブな日本語訳でこのような如実に漢字で意味合いを論じる必要性があった。それぐらい的確な英文和訳である。

この論文を教育工学がご専門である中室先生が知らないわけがないので、たぶんこれを踏まえたうえでの今回のニュースピックであろうと思われる。因果は実は統計においては一回のサーベイで調べられるものではない。これは当然のことで、「もともと狂暴だった子供がゲームをやっていたのか」「もともとゲームをやっていた子供が狂暴だったのか」を一回きりのサーベイで調べられるわけがないのだ。これはたとえ追跡調査といえども限度があるということを示している。論文はこの因果についてはどうあがいても本腰を入れないと調べようがないので、「マーカー」をつけたリスク調査といった観点から紐解いている。結果、相関は認められたものの、それほど重度なものではない。曰く「アクション映画を見た子供がそれをマネするぐらい」であり、また「ゲームに触れていない子供も暴力性を持ちうる」ことが示唆されている。

論文はこう結論付け、またゲームに対する懐疑論を紐解く要因になったとはいえども、統計学が経験科学であるという本質について限って言えば、まだまだ不透明な点も多いと感じる。本論文はAmazonなどで容易に手に入り(当該の英語レビューを見る限り、プロパガンダとかフェイクとかの言葉で辛辣に批評するものもいる)、またこの分野の権威的なものでもあるので興味のある方は購入し、ゲームに対する反論を考えてみることもいいだろう。それが建設的で批判的な結論に導かれれば…。

marikoi

ここの主筆・共同管理人。ぶっちゃけ狂人。

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