特集記事:NHK大河ドラマテーマ—近現代史へ

もともとNHK大河ドラマはほとんどが中世~近代に主軸を据えたものが多かったはずです。一覧を見ても、やはり江戸~幕末あたりがほとんどで、次点で中世~戦国大名時代にテーマが据えられ、ニッチな主人公もたびたび登場。ただし、NHKがこのテーマの時代の枠にこだわっていたという記載は見受けられません。過去番組構成を見ても、確かに近現代史は少ないですが、あることにはあるし、昨今ではスペシャル枠として「坂の上の雲」を取り上げたことでかなり注目を浴びました。これはご存じ、司馬遼太郎の代表作品であり、黒船~竜馬とかそのあたりの周辺人物を描いているものです。

ですが、2020年に東京オリンピックが控えており、近現代史の時代のニーズが高まったこともあったのか、あるいは、もう主人公となるネタがほとんど尽きてきたのか….ここにきて、明確な基準はないものの、大河の歴史的価値観は明らかに変わりつつあります。これはおそらく理由があって、NHKなりの中立客観報道ということに起因している板挟みの苦しみの結果そうなったと私は考えています。自民党の故町村信孝は、かつて歴史教育問題についてこう言っていました。

「日本の公立学校ではシビアな近現代史は取り扱わないであいまいにするという伝統がある。それは日本のタブーであり、複雑な日本周辺の近現代史的な歴史観を描くことを公立学校でやってはいけないからであります。わざとあまり授業に盛り込まない、ということが望ましい。」と。

これはもっともなことで、例えば公立学校で盧溝橋事件や日清・日中戦争を描くとなるとやはり南京事件や731部隊のこと、100人切り事件だとかもんのすごい複雑な極めてシビアな面がありますから、公立学校でやるとなると中立性が保たれない。ましてや受信料収入で賄っている公共放送でそういうことを描くとなると、かなり厳しい国際的な批判もあると思う。ですので町村の言っていたことはある意味においてはまったく正しいわけです。これはマジなことで今話題の教科書問題や保守教育問題でもあります。

ですが、時代のニーズが変わってきたのも事実であり、このあたりが日本の板挟みの苦しみでもある。近現代史をタブーにしてあいまいに描くということが果たしてあっていいのか?本当に時代を直視し、現実を見て番組を作るのであれば多少脚色の類は必要といえども、近現代史を取り扱わないということはかなり問題とされるものでもある。ここにダブルスタンダード(二重基準)があるわけです。だから西郷隆盛を次の大河枠(「西郷どん」)としてあつかい、その次にかつての東京五輪(「いだてん」)といういかにも問題にはされないような形で盛り込んできたのではないか…というのが私の推測であります。西郷については影響は征韓論ぐらいだし、東京五輪は国際貢献とか平和の祭典という名目がある。

おそらく今後NHKは、しっかりと歴史を直視したうえ(※)で現代史もある程度は描いていくでしょう。NHKとしても取り扱う歴史上の人物がなくなってきて、単調になり、視聴率が落ち込んでいるという問題もありそうです。かつて「天と地と」などを描いた時代とはやはり歴史観も視聴者のニーズも変遷し、時代に沿って変わっていくものと思われます。これは私の推測ではありますが、まず一般的に言っても間違いないのでは?と考える次第です。

(※)NHKは固有名詞を報道内で使用しなかったことで有名ですが、昨今では企業名などをしっかりとネームに映し出していることもみなさんお分かりだと思います。ほかにも手術シーンにモザイクをかけなくなったり、「タブー」とされる分野には極めて神経過敏でありながら、事実を直視、ファクト=真実は事実として伝える責務が公共放送にあると判断し、内規(内部規則)でかなり方針が変わってきたように感じます。海外の公共放送や報道機関などでは、テロ死亡事件の現場にモザイクかけませんが、そういう意味ではNHKも今後苦しみながら真実を追い求める報道姿勢をめぐっての結論を出していくことでしょう。

画像は日本放送協会 – Wikipediaより引用

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA