これならわかる国際政治:堕落する左翼・痴呆化した保守・エヴァ化するアベ。

いまさらながら藤原正彦への城への批判(http://jyoshige.com/archives/3403521.html)は妥当だ。城は皮肉って「痴呆化する保守」としてこう書いている。

愛国者・藤原氏曰く、今の日本は様々な危機に直面しているそうだ。凋落する一方の経済、世界一の財政赤字。政治の低レベル化と官僚の暴走。

そして、氏の国を憂うる思いは、若者にも向かう。なかなか結婚せず、してもなかなか産もうとしない。モラルも地に落ち、子殺し親殺し、通り魔殺人など、かつてありえなかったような犯罪が頻発するようになった。学級崩壊や陰湿なイジメによる自殺の蔓延は、子供の間でもモラル崩壊が進んでいることを示しているそうだ。

その理由なんだけれども、すべてのきっかけは、戦後にアメリカが日本の誇りを失わせるために仕組んだ陰謀だそうである。ここから東京裁判や「第二次大戦は侵略戦争か?」論まで延々と話が続くのだが、これがもうすごい長さで、途中で何の記事読んでたのかわからなくなるほどだ(中身がないのでここはパスしてOK)。

経済の凋落はわからなくもない。財政赤字はそうそう簡単な問題ではないことが最近の研究でわかってきた(シムズ理論)。政治の低レベル化も妥当だ。官僚の暴走は単純には言い切れない。若者が子供を持ちたがらないのは、城もいうように、先進各国で見られる普遍的な要素だ(これはトッドの近代化国家理論に証明されているモデル)。まず、治安は戦前や戦後まもなくとは違い良くなっている。だが、治安問題は単純には言い切れない。体感治安が悪化しているというメディアのありかたも含めて。モラルの崩壊はデータをとってみなければわからんが、理解はできる範疇だ。いわゆる「田母神的陰謀論」は城のような知識層には単純に受け入れがたい要素だ。城はこう続ける。

で、結論だが、要するに日本は昔から穏やかで格差の無い平等な社会であり、帝国主義、新自由主義といった非日本的なイデオロギーは忘れて伝統に立ち返れというわけだ。たとえば自由貿易のための規制緩和を外国から要求されたら、こう切り返せばよいらしい。「日本人は聖徳太子以来、和を旨とする国柄です」(冗談じゃなくて、本当にこう書いてる)。

そういったものを取り戻すために、憲法や教育基本法を改正し、個人主義から「長幼の序」「孝」を叩き込めというのが、氏の日本国民に告げたいことらしい。よくわからないけど、これで少子化対策もバッチリと言っておられる。

というが、まったくもって妥当。トッドの近代化国家モデルではトッドはこのようにいう。

理論の概略)国家の近代化は識字率が上昇して、理性が保たれ、知的に安定することである。すると自然に、受胎調整が起り、少子化になる。これはいくつものどの国家でもデータで見受けられる客観的事実である。そのうえで、乳児死亡率に注目し、貿易赤字に着目することで、この国家の予言の糸口は見える。この理論から言えば、イスラム圏で近代国家化しているのは実はそうみられているトルコではなく、イランであることは明白である。

そのうえで技術的不均衡も武力的不均衡も結果的には同じであり、世界的不均衡ふたつは中東と東アジアである(日本は技術力が高いが、中国は技術力が低い+北の問題がある)。不均衡は地域の安定を覆すので、イランは核をもったほうがいい。同じように日本も地政学的に意味のある国交が構築できるロシアに近づき(既に安倍首相はこの提言に気づいている)、中国を挟むようにして核を持つべきである。

これがトッドが「帝国以後」でいったこと。現実問題として日本は核持てないから、トッドへの非現実的だという批判もある。後々の「ドイツ再帝国化理論」においてトッドはヨーロッパ統合を壊滅させるのがメルケルの正体といっているが、これは池田によって批判された(すまんソースが見つからなかったが、たしかトッドの「ドイツ帝国」の仕事については批判してたはず)。おそらく池田もトッドの新書は読んでいるだろう。

一応30代論者の一人として言わせていただくと、晩婚化も少子化も別にモラルの問題ではなく、先進国共通の現象である。対策としては(若年層の負担集中を軽減するため)労働市場を流動化し、世帯の所得を引き上げるために女性の社会進出を進めるしかなく、むしろ藤原センセイの御提言は日本の国力という観点からはものすごくマイナスなんですけど。

と城はいうので、このトッド理論もまた城はすでに読んでいると思う。城もいうように、トッドやピケティと日本の知識陣を比較してみると、まったくもって日本の国家観には戦略がない、そう城や池田は警鐘を鳴らす。マクロンでさえ革命は起こせない。新自由主義とリベラルの間で苦しむ国家はいずれ崩壊するだろう。堕落する左翼・痴呆化する保守、そしてエヴァンゲリオン化するアベ。自民が勝とうが、希望が勝とうが、どっちに転んでも日本の未来は少なくとも理論的にはないのだ。カタルーニャ問題もクルド問題もそれを象徴している。城や池田は端的にそう語ってくれているわけだ。―「イラクという国は既にないのだ」 ピーター・ガルブレイス

画像出展)「After the Empire」Emmanuel Todd https://www.amazon.co.jp/After-Empire-Breakdown-American-Order/dp/1845290585
および「The End of Iraq」Peter W. Galbraith https://www.amazon.co.jp/After-Empire-Breakdown-American-Order/dp/1845290585より引用

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