マジで恋する書籍レビュー:「リンダキューブ・ハッピーチャイルド」桝田

リンダキューブに初めてふれたのは、俺が中学生で学校に行っていないときに図書館で小説版を読んだのが最初だった。のっけから世界観がすごくて、当時リンダキューブの原作大本が桝田のPCエンジン向けゲームだとはまったく思ってもしなかった。後に知ることになる「AKIRA」のアニメ版も手掛けたクリエイターによる原作アニメーションはショッキングそのものだったが、それに順じた装丁の小説版であっても俺にとっては当時それ衝撃そのものだった。この小説版は”もうひとつの”リンダキューブを扱ったものだ。

醜愛の形状…死に当面したときの絶望感…人間が狂気に晒されて無残にも惨たらしくそれが表現される様…悲惨極まりないグロエロ描画…どれをとっても麻薬的な禁忌にふれた題材は当時のPCエンジンでこそできたものであって、それを原盤に据えた小説版リンダキューブはまさしくラノベ以上の傑作だった。明らかに、この小説は大江健三郎「飼育」「死者の奢り」に次ぐ、それに匹敵するぐらいの悪魔的芸術だった。想像力が強かった俺にとってこれは大江に比類するぐらいのショッキングなカルト小説だったのだ。

背後にあるのは、箱庭計画というノアの神話をもとにしているブツ。8年後惑星が滅びるとき、ケンとリンダは雄雌のペアとして生存者として扱われる運命にある。生物を雄雌のペアで持ち寄り、それでもってして絶滅を防ごうという計画が大筋のストーリーの下敷き。この小説は原作、特にBエンドを主にしている。導かれるエグい描画、特にエモリとその不遇の娘を主題に人間の残酷さ、現代という不安定な場に生きる、人間の人間による人間のためのエゴな神話の世界とハード系のSFをミクスチャした独特の世界観はある種の危険な新興宗教だ。

もともと桝田はこれを映像化したいと思っていた節があって、その意見自体はまさに妥当であると思う。また、そういう風にいう原作の熱心なファンであるゲーマーも、聞くところ多いらしい。これを映像化したら確かにSFのカルト的な金字塔になるのは間違いないように思える。ただ、その適役が「おれしか2」で失敗した桝田が手掛けられるのかということは今でもわからん。ただし記憶に残る、現代の人間の作った最強でありながら最悪なエンターテインメントであることにまず間違いない。プロットの作者は間違いなく狂人である。だが、それはあえて誤解を招く言葉で言えば、芸術でもあるのだ。復刊の要望も現実味も高まりつつあると聞く。

小説を読むたびに背筋が凍る「リンダキューブ・ハッピーチャイルド」いま、再び宴が始まる。

※アルファシステムHP(http://www.alfasystem.net/game/linda/linda.htm)よりヒロイン・リンダを引用

marikoi

ここの主筆・共同管理人。ぶっちゃけ狂人。

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